「キン肉マン マッスルタッグマッチ」。1985年、バンダイより発売。ジャンプの格闘漫画の金字塔、『キン肉マン』をゲーム化したキャラゲーでして、プレイヤーは8人のキャラクターの中から2人を選び、タッグを組んでCPUと、あるいはファミコン友達と戦います。
登場するキャラクターはそれぞれ特徴も違えば、使える「必殺技」も違います。
リング上部、あるいは下部から、ミートくんが投げてくれる「光の玉」をとると、一定時間キャラクターのスピードがアップし、キャラ固有の必殺技を使うことが出来ます。
キン肉マンがキン肉バスターで、アシュラマンは阿修羅バスター。ラーメンマンは空手殺法で、ロビンマスクは当然のタワーブリッジ、ウォーズマンはベアークロー、バッファローマンはハリケーンミキサー。
テリーマンはカーフブランディングかと思いきや実はブルドッキングヘッドロックで、ブロッケンJr.はJrなのになぜか毒ガス殺法でした。
ファミっ子たちの間で「強キャラ」として認識されたのはブロッケンJr.でした。ブロッケンJr.の毒ガス殺法は、ゲーム中唯一の飛び道具であって、一度当たってしまえば連続ダウンがとられる強力な攻撃です。
当初、ブロッケンJr.をどちらが先に選択するか、ブロッケンJr.禁止などというローカルルールも存在し、今でも、「ブロッケンJr.最強」という認識のまま、このゲームへの印象が上書きされていない人も多くいるはずです。
その後研究が進み、ブロッケンJr.の足の遅さが決定的な弱点として認識されるようになりました。ブロッケンJr.が性能を発揮するためには光の玉を取らないといけないのですが、足が速く立ち回りが強いキャラが相手だと、そもそも光の玉を取らせてもらえないのです。
そこで、足が速くブロッケンJr.に有利に立ち回れるキャラとして、ウォーズマン・アシュラマンの性能がクローズアップされていきます。
特にウォーズマンについては、キック力は弱いものの「ベアークローを一発当てればそのままハメることができる」という要素もあり、対戦において猛威を振るうようになりました。同じ理由でバッファローマンの「ツボにはまった時の強烈さ」も認知されていきます。
アシュラマンは、必殺技こそやや使いづらいものの、スピードやキック力がバランス良く高性能で、通常時の立ち回りで多くのキャラを圧倒できました。
一方、ブロッケンJr.と同じく足が遅いものの、テリーマンの必殺技が実はベアークローだろうがハリケーンミキサーだろうがお構いなしに撃墜する鬼性能であることや、ラーメンマンのキック力、ロビンマスクのバックドロップの強さなどもだんだんと知られるようになり、対戦時の相性差は目まぐるしく変動していきました。
こんな中、終始一貫して不動の弱キャラであり続けたのが主人公であるキン肉マンであって、キン肉ドライバーを決めて起き上がりを攻める以外に勝ち筋がほぼないのに、足が遅すぎて光の玉を取れる可能性がほとんどないという残念性能でした。
ただ、そんな中でも、原作通りキン肉マンを使って必死にウォーズマンに立ち向かう、熱いファミっ子も存在しました。私もその一人であって、キン肉ドライバーを決めた時のあまりの爽快感に完全に魅せられてしまっていたのです。
つまり『キン肉マン』はゲームとしての理想的な到達点の一つと思われます。