井岡一翔 VS 田中恒成
新型コロナウイルスにあえいできた今年の日本ボクシング界を締めくくる一戦は、ワクワクする大一番となった。日本選手で初の4階級制覇を成し遂げたWBO世界スーパーフライ級王者井岡一翔に、世界最速16戦目での4階級制覇を狙う同級1位の田中恒成が挑む。
会見から両者が火花「レベルの違いを見せる」「直接戦ったら俺の方が強いと思います。世代交代というか、文句のつけようがないKOで決着をつけたい」
横綱の地位を固めた井岡に、スピード出世で駆け上がってきた田中が挑む構図。試合に至るまでの両陣営の言動まで、実に興味深い。
別日にリモートで行われた会見から、両者は火花を散らした。王者が「レベルの違いを見せる」と言い放った翌日、挑戦者は「直接戦ったら俺の方が強いと思います。世代交代というか、文句のつけようがないKOで決着をつけたい」と返した。井岡には一時代を築き上げた誇りと意地、田中にはその座を奪う絶好のチャンスに燃える気持ちがこもっていた。
かつて、すでに世界王者だった井岡は当時まだ高校生だった田中とスパーリングで拳を交えている。その時のことを井岡は「覚えていない」と言った。練習相手のことはいちいち記憶にとどめない。それよりも世界の舞台で、世界の強豪と戦ってきたという自負があるのかもしれない。
最大の敵は新型コロナウイルス
ともにオーソドックスのボクサーファイター。井岡は大阪の興国高から東農大(中退)、田中も中京高-中京大とアマで実績を残し、プロでもエリート街道を歩んできた。注目の一戦はディフェンシブにもなりがちだが、田中が早い回で仕掛けていくとか、戦略面でも楽しみは大きい。
その楽しみを奪う最大の敵がコロナだろう。実際にこれまでコロナの影響で京口の世界戦や元世界王者高山の復帰戦など試合、興行の中止があった。とにかく無事に大みそかを迎えてほしいと切に願う。