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「私にとっての王子様だから」と王子様と名付けられた男性が改名を決意

王子様と名付けられた男性が改名を決意

「だって、変な名前って笑われて当然でしょう。王子様だもん」

そもそも王子というのは「役職」だ。なのに「様」が付いていること自体、おかしいと自分でも思った。

「よし、改名しよう」。そう思い立った。中学時代、人気漫画「こち亀」こと「こちら葛飾区亀有公園前派出所」を読んで、本名は変えられると知っていた。170巻の「改名くん」の巻。不運な男たちが名前を変えた後、宝くじが当たったり、女性にもてるようになったりして運気が上昇する、というドタバタ劇だ。

ストーリーそのものよりも、改名できるという社会のルールが心に刻まれた。

それに、これだけ名前がいちいち注目される状況には、もう耐えられなかった。変わった名前だからではない。

「単に親が付けた名前が珍しいというだけで目立つなんて、プライドが許さない。名を売るなら、自分の実力で勝負したい」。そのために、自分で自分の名付けをしようと心に決めた。

「肇」以外は考えられなかった。

母に伝えたら残念そうな顔になって、しばらく口をきいてくれなかった。でも、最後は気持ちを尊重してくれたと思っている。

父は、「おまえの人生だ」と言ってくれた。

「名前、どーすっか?」

高校のクラスメートに相談すると、友人は手にしていた倫理の教科書をパラパラとめくって手を止めた。

「河上肇」。「貧乏物語」で知られる経済学者だ。

「はじめって感じの顔じゃね?」。友人の一押しに、不思議としっくりきた。漢字も格好いい。

「赤池肇って合うよな」。もう、「肇」以外は考えられなかった。渡辺さんに報告すると、「自分が良いと思う名前にすればいい」と背中を押してくれた。